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ミニコラム

右腕ブルース⑥

投稿日:2025年12月19日|最終更新日:2025年12月19日

前回のあらすじ
おととしの秋ごろ、右腕を使い過ぎで痛めてしまいました。回復したかと思うとぶり返す厄介な症状で、簡単には治らないことを覚悟し、日々の生活の中で右腕への負担を減らす工夫を始めたのでした。毎日の食事の支度では、よく切れる包丁に買い替えることで予想以上に腕の負担を減らすことができました。パソコンを使う仕事でも、フットスイッチや音声入力、左利きマウスなど、右腕の負担を軽減する工夫を続けていました。ところが、右腕の代役で負担の増えていた左腕にもついに痛みが出始めました。(初回はこちら

接骨院

さまざまな右腕の負担軽減策が功を奏し、少しずつではあるものの回復の兆しが見えてきたところで、左腕に痛みが出始めたことはさすがにショックでした。ここで左腕を痛めてしまうともう代わりはありません。とはいえ、いまさら左腕を守るために右腕の負担を増やしたくはないので、しばらくこのまま様子を見ることにしました。まだ左腕が新しい役割に慣れていないだけで、そのうちに落ち着いてくるに違いないと自分に言い聞かせるしかなかったのです。

そんなとき、駅から自宅への帰り道で接骨院が目にとまりました。その日はたまたま、いつもの道から一本わきにそれたところを歩いていたのでした。もしやと思って、スマホでGoogle Mapを起動して調べてみたところ、口コミも悪くなく、Webサイトで見た治療方針も好感の持てるものだったので、さっそく次の土曜日に行って事情を話してみました。痛みが出てからすでに1年が経過していました。先生は症状について断定的なことは言いませんでしたが、手始めに巻き肩を治すと言って私の右肩を押さえて力を加えました。たまたまかもしれませんが、その日はよく眠れました。

 

それからしばらくの間、週に2回ずつ仕事の後に通院することになりました。音波が出ているという小さなお風呂みたいな装置に腕を突っ込んだり、低周波治療器らしきもので肩や腕に刺激を与えたりした後で、先生は私の腕のあちこちを押してみて痛みが潜んでいる場所を探っているようでした。手をつかんでぐいっと力を入れることもあったので、手首も少しずれていたのかもしれません。金属のへらのようなもので腕をこすっていたこともありました。チタンが練り込まれているという直径2センチくらいのテープを何枚か貼ってくれた日もありました。

数週間後には、回復できる範囲で右腕を使い始めてみるよう助言されました。また、簡単な筋力強化も始まりました。大げさなものではなく、先生に手を押さえてもらった状態で手首を繰り返し動かして負荷をかけるだけだったのですが、あるとき左手で右の前腕を握ってみると筋肉が増しているように感じられました

思えば、それまでは右腕を休めることばかりを考えていました。いったん痛みがぶり返すと長引くことが経験的にわかっていたので、少しでも痛みを感じると大事をとるようにしていたのですが、そのせいですっかり右腕が衰えていて、かえって回復を遅らせていたのかもしれません。洗濯物を干す程度のことでも腕がだるくなることがあったのは、そのせいだったのかもしれないと思い当たりました。

そうして、多少のダメージなら一晩である程度回復できることがわかってくると、だんだん自信が付いてきて、完全に良くなったとは言えないものの、やっと長いトンネルを抜け出したと思えるようになりました。仕事が忙しくなったのをきっかけに通院は中断してしまいましたが、良い気付きをもらえたとありがたく思っています。今でも軽いダンベルを使った筋力維持は続けています。

右腕の痛みとの1年以上の格闘を通じて、道具の選び方や使い方、そして何より適切な治療の重要性を学びました。不便を工夫で乗り越えることで、新しい発見や改善策を見つけることができるものですね。

(おわり)

編集部 F